mdi-home 税理士法人YCA

{{ title }}

文書作成日:2025/12/02
改正で年末調整の再計算が必要となる海外出国者とは

[相談]

 私は会社で経理を担当しています。
 当社の従業員A氏は、令和7年11月15日付で3年間の予定で海外支店に転勤となったため、その出国前の最後の給与で年末調整を行いました。
 ところで、令和7年11月に所得税法上の通勤手当の非課税限度額が改正され、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当にさかのぼってその改正が適用されるそうですが、上記のA氏について、何らかの対応が必要になるのでしょうか。教えてください。
 なお、当社では、従業員の福利厚生の向上を図る観点から、各人への通勤手当支給額を所得税が非課税とされる通勤手当(非課税通勤手当)の金額に合理的な範囲内で一定額を加算した金額としています。

[回答]

 ご相談の場合、A氏の出国前に行った出国時年末調整の再計算を行うことが必要となります。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.従業員が海外出国する際に行う年末調整の概要

 所得税法では、給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者(※1)で、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合において、源泉徴収された所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した税額(年調年税額)に比し過不足があるときは、@その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、Aその不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならない、と定められています(年末調整)。

 したがって、今回のご相談の場合のように、給与等の支払を受ける人(従業員)が1年以上の予定で海外に転勤することになったために非居住者(※2)となる場合には、給与等の支払者は、原則として、その従業員が海外に出国する日までに、その従業員にその年中に支給された給与総額を対象として、年末調整を行わなければならないこととなります(出国時年末調整)。

※1 居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。

※2 非居住者とは、居住者以外の個人をいいます。

2.通勤手当の非課税限度額の改正の概要

 令和7年11月20日に施行された改正所得税法施行令では、通勤のため自動車などの交通用具を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられています。

 この改正後と改正前の1ヶ月あたりの非課税限度額は、次の表のとおりです。

3.改正後の非課税限度額の適用時期

 上記2.の改正は、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(※3)について適用すると定められています。

※3 同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するもの(特定差額追給手当)を除きます。

4.改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた海外出国者への対応

 国税庁によれば、上記2.の改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた場合で、改正後の非課税限度額を適用することで新たに非課税となった部分の金額があるときは、改正後の非課税限度額により出国時年末調整の再計算を行うこととされています。

 したがって、今回のご相談の場合、A氏の出国前に行った出国時年末調整の再計算を行うことが必要となります。

[参考]
所法2、190、改正所令20の2、所得税法施行令の一部を改正する政令附則1、2、3、所基通190-1、国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(令和7年11月)」、国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A(令和7年11月)」など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。



特定扶養親族に対する扶養控除と特定親族特別控除との併用可否2025/11/25
相続人が相続放棄した場合における相続税の基礎控除額2025/11/18
国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供に「少額特例」を適用できるか2025/11/11
令和8年分の扶養控除等申告書から新登場する「源泉控除対象親族」とは2025/11/04
所得税の非課税額を超えて支給される通勤手当の消費税法上の取扱い2025/10/28
早生まれの大学生と特定親族特別控除2025/10/21
スキマバイトの源泉徴収票に記載された「丙欄適用」の意味2025/10/14
令和7年10月1日から新設される「教育訓練休暇給付金」と所得税2025/10/07
令和7年分年末調整の対象となる人ならない人2025/09/30
令和7年度税制改正による所得税法上の配偶者特別控除の影響2025/09/23
大阪・関西万博への物品提供費用にかかる法人税法上の取扱い2025/09/16
令和7年度税制改正後の所得税および個人住民税の非課税ライン2025/09/09
令和7年分以後の所得税法上の扶養親族の所得要件の見直し内容2025/09/02
令和7年分以後の所得税法上の同一生計配偶者の所得要件の見直し内容2025/08/26
免税事業者から課税仕入れを行った場合の経過措置(80%税額控除)の適用期限2025/08/19
インボイスの保存が不要となる「少額特例」の適用対象期間2025/08/12
特定親族特別控除とは2025/08/05
令和7年分からの給与所得控除額の改正と個人住民税2025/07/29
令和7年分所得税からの給与所得控除額の改正内容2025/07/22
令和7年度税制改正〜個人住民税における基礎控除額の改正の有無2025/07/15
令和7年分所得税からの基礎控除額の改正と2年間の限定措置2025/07/08
令和7年分所得税からの基礎控除額の改正内容2025/07/01
令和8年1月1日からの退職所得の源泉徴収票の提出範囲の拡大2025/06/24
確定拠出年金制度の運用指図者期間と退職所得控除額の計算における勤続年数の関係2025/06/17
会社が従業員に支給する資格取得費用は給与課税の対象になるか2025/06/10
食券の支給と給与課税2025/06/03
{{ new Date().getFullYear() }} (c) 税理士法人YCA All Rights Reserved.